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やめるときも、すこやかなるときも/窪 美澄【レビュー】

★★★

窪 美澄さんの長編小説

窪 美澄さんの作品はいつも短時間で一気に読める物が多いのですが、この作品に関しては数日間の時間を要しました。

登場人物も少なく、決して読みにくいと言う事はないのだけれど、ページの中に漂う空気の重みと緩やかな流れのせいなのか中々ページを捲る手が進まなかった1冊です。

主人公は家具職人の壱晴(いちはる)
高校生時代のトラウマにより、毎年十二月の数日間、声が出なくなる症状が出てしまいます。
そんな壱晴が制作会社勤務の桜子(さくらこ)と友人の結婚式がきっかけで出会い、そこから二人の運命が始まります。

共に欠けた部分を持つ二人が少しづつ距離感を計りながら歩み寄って行く姿が描かれていて、そこには人の心の奥底に潜んだ繊細さが丁寧に描写されています。

派手な起伏こそありませんが、「人」の持つ、温かさ、弱さ、ずるさ、放漫さ、など様々な感情が表現されており、他者と共に生きる事の難しさと共にエールも感じた読後感の良い温かみのある作品でした。




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