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バラカ/桐野 夏生【レビュー】

★★★★★

桐野さんの長編小説 650ページもある分厚い1冊です。

プロローグ
第一部 大震災前
第二部 大震災
第三部 大震災八年後
エピローグ
で構成されています。

主人公は表紙の少女 バラカ
本当の名はミカ・サトウ そして川島光であり、薔薇香(バラカ)とも呼ばれます。

3月11日の大震災、福島での原発4基爆発事故を背景に、四十代独身で子供を持ちたい沙羅(さら)が友人の優子と共にドバイへ行き赤ん坊市場で「バラカ」を人身売買する所から彼女の数奇な運命が繰り広げられて行きます。

沙羅、優子、そして同じ大学時代を過ごし鬼畜とも思える人格崩壊した川島、自己中な大人たちの中でバラカが翻弄されて行く姿は読んでいて切なくなりました。

悪い大人たちがたくさん登場しますがバラカがおじいちゃんと慕う豊田吾郎と、健太の存在があった事は救いでした。

バラカに感情移入しながら読み進め、味方だと思いきや敵だったり、希望と落胆を繰り返し、苦しくなりながらもこの物語がどう着地するのか気になって一気読みでした。

そしてエピローグの1ページ目ではこみ上げる物がありました。
フィクションとノンフィクションが融合した感があり、まるで数時間に渡るドキュメンタリー映画を観終った後の様な脱力感と満足感のある作品でした。

やはり桐野さんが描くダークな世界観は癖になります。




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