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坂の途中の家/角田 光代【レビュー】

★★★

欠かさず読んでいる角田作品ですが、今回の長編は今までで一番読了まで時間が掛かった作品で、かなりしんどい読書時間となりました。

終始重苦しい感情表現が続きそのネガティブさにうんざりしつつも、結末が気になりなんとか途中脱落せずに読了しました。

主人公は虐待事件の補充裁判員になった里沙子
子どもを殺した母親をめぐる証言に触れるうちに、いつしか自分自身の境遇に自らを重ねて行きます。
そのシンクロにより被告人の水穂に感情移入しつつ肩入れして行きます。

乳幼児虐待事件と言う重く暗いテーマに、更に夫婦、家族間の疑心暗鬼も加わり、どんよりとした作品ですが、子育てを経験した人であれば、大なり小なり共感出来る所もあると思います。

自分も実家から離れた県外で1人で子育てをしていた頃の大変さを思い出し、被告人の水穂、主人公の里沙子の気持ちが理解出来る点もありました。

何気ない保健婦さんの一言だったり、友人、知人のアドバイス、そして一番理解しているはずだと思っていた夫に言われたさり気無い言葉
それらを悪意の様に感じた事は誰しもが1度ならず経験がある様に感じます。

夫婦間の「対等」の意味もしみじみと考えさせられましたし
非常に重いテーマではありましたがリアリティのある作品でした。




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