わたしは栞を挟まない|よつばの読書ブログ

踏切の幽霊/高野 和明【レビュー】

★★★

そこはかとない哀しみが漂う。

舞台は1994年。
主人公は雑誌記者の松田。

読者の投稿を元に心霊ネタを調査していく中で浮き彫りになっていったのは、殺害された一人の女性の存在。
だがどれだけ取材を重ねても誰も彼女の名前すら知らない。

笑い方も知らず、生ける屍のようだった彼女の真実の姿が見えて来ると切なさで胸が締め付けられる。

時代の理不尽に憤り、更に「あの子は、何のために生まれてきたんでしょう?」母親のこの言葉にも様々な想いが込み上げた。

怨み辛みが浄化され、踏切に佇む彼女に安らかな眠りが訪れる事を願わずにはいられない。




  • 人気のレビュー
  • 関連するレビュー

気軽にコメントどうぞ

*
*
* (公開されません)