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その話は今日はやめておきましょう/井上 荒野【レビュー】

★★★★

いつもどんよりとした曇天を連想する井上作品
今回もそこかしこに不穏な空気が漂っていました。

72歳の昌平、69歳のゆり子、二人が住む一軒家で通いの家政夫として働く事になった若者、石川一樹、この3人を軸として物語は展開します。

どこにでもいそうな人の良い初老の夫婦が、一樹と関わる事で気持ちが揺れ動きます。
根は「いい子」隣人とのトラブルを小気味よく解決したり頼まれた仕事は快くこなす、その反面、厭世的で暴力的、自暴自棄な面もある一樹

一樹の危うさと、「老人」と呼ばれる事に抵抗を持ち、老いに逆らおうとする夫婦の感情がリンクしてそこにリアリティーを感じます。

実際に存在しているかの様な登場人物様、それぞれの心理描写が秀逸で絶えず脳内映像で場面が見えた作品。




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