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罪のあとさき/畑野 智美【レビュー】

★★★★

畑野 智美さんの長編小説

主人公はカフェ ハギワラで働く渡辺楓(わたなべ かえで)
14歳の時、楓の同級生、卯月正雄(うづき まさお)君が
教室でクラスメイトの永森(ながもり)君の首を切って殺害してしまいます。

時が流れ、楓は卯月君に再会、そしてその後の二人が描かれて行きます。
徐々に卯月君に惹かれて行く楓
けれど卯月君が何故、永森君を殺してしまったのか中々本質に触れないまま物語が進行して行きます。

少年事件を扱った内容ですが、卯月君の全く悪人ではない描写から
重いテーマでありながら、サラサラと読めます。
楓に感情移入しながら自分自身も卯月君の秘密が知りたくて一気読みでした。

人とは違う記憶力を持つ卯月君と言語能力に欠けた妹、千尋(ちひろ)
病的な心を持つ卯月の母親と頼りない夫
複雑な家庭環境の中で何とか必死で生き抜いている卯月

そして永森君を殺害してしまった理由
卯月君の気持ちに寄り添った時、何とも言えない切なさが残りました。

全体に靄が掛かっている様なイメージのストーリーでしたが
理屈では説明出来ない、人生の妙が表現されていました。

色々あった楓と卯月ですが悩みながらも幸せになって欲しい。
未来に光を感じるラストにはホッとさせられました。




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