★★★★★
雫井 脩介さんの長編小説
読み終わって数日経ちますが、未だ引きずるくらい重くて切なくて悲しいストーリーでした。
少年犯罪を扱った著書は数多くありますが
この本は少年達ではなく事件に関わった息子の家族の葛藤に焦点が当てられています。
石川一登(いしかわ かずと)と、妻・貴代美(きよみ)
高一の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)
一見、どこにでもいそうな普通の4人家族です。
ある日、規士の友人である倉橋与志彦(くらはし よしひこ)が遺体となって発見されます。
現場から逃げた少年は2人、行方不明となっている少年は3人
この矛盾から、石川夫婦の辛く長い時間が始まって行きます。
息子、規士は加害者なのか?それとも被害者なのか?
加害者だとするなら殺人犯、もし被害者になっているなら当然それは我が子の死を意味します。
どちらにしても親としてこれ程辛い事はありません。
息子の無実を望む一登、しかしそれは死を意味し
生きていて欲しいと望む貴代美、それは殺人犯を意味します。
夫婦の気持ちの擦れ違い、揺れ動く心、移りゆく気持ちが丁寧に丁寧に描かれていて
自分だったらどちらを望むのか考えながら読ませて頂きました。
産みの性である女と言う立場からもし自分の立場だったら息子には生きていて欲しい
でも本当にそれで良いの?と自身も石川夫婦に感情移入し悩み続けました。
そして結末を知りたい気持ちと、知りたくない気持ちが交差する中、終盤に至っては涙が溢れて来ました。
全て読み終えて、加害者・被害者と自分の立場にだけ気を取られ
最後に一番大事な事、忘れていた事に改めて気づく事も出来ました。
読み応えのある1冊です。

幼少期から本が大好きなよつばと申します。私と同じく本が好きな方々の参考になれば幸いです。SNSもフォローしてくださると嬉しいです。