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向田理髪店/奥田 英朗【レビュー】

★★★★

奥田さんの短編集

「向田理髪店」「祭りのあと」「中国からの花嫁」

「小さなスナック」「赤い雪」「逃亡者」

これら6編が収録された連作短編集です。

舞台は北海道の寂れてしまった炭鉱町、苫沢町(とまざわちょう)
ここで生活する人々の悲喜こもごもが描かれていますが、登場人物が本当に実在するかの様に錯覚するくらいリアリティーがあります。

著者は岐阜県生まれですが、小説には方言もそこかしこに出て来るのでその辺で更にリアルな感じを醸し出しています。

理髪店を営む向田康彦53歳が軸となり物語が進んで行きますが、田舎の人達の優しさ、好奇心、おせっかい、不満、温かさなどどこにでも転がっている様な人間的な感情が丁寧にフンワリと描かれていて心がほっこりさせられます。

「ナオミとカナコ」の様なドキドキ感はありませんが、ゆるりとした読後感の良い作品です。
幅が広い奥田作品、次作も楽しみです。




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