わたしは栞を挟まない|よつばの読書ブログ

神さまを待っている/畑野 智美【レビュー】

★★★★★

期待を裏切らない読み応えのある作品だった。

20分並んでようやく食べれる事になった数量限定の鯵フライだが、自分の席にだけソースがない。
主人公、水越愛の未来を予測させる冒頭の鯵フライのシーンから惹き込まれる。

普通に大学を卒業し文房具メーカーで派遣社員として働いていた26歳の愛。
派遣を切られた事で、家賃が払えなくなり、瞬く間にホームレスへと転落して行く。
実家はあるものの、最低の父親であるが故、頼る事が出来ない。

自分の住む世界とはかけ離れている様でありながら、人生のどこかでひょんな事がきっかけで陥ってしまう世界の様にも感じる。
実際、現実問題として、愛やマユ、サチ、ナギの様なケースは確実に存在しているのだろう。

貧困女子の現実、絶望と希望の狭間で揺れながら苦しむ女性達の姿に心がひりついた。
貧困というのはお金がないことではなく頼れる人がいないと言う事。

「助けて」を言える相手の存在の重要性を痛い程感じた。




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