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じっと手を見る/窪 美澄【レビュー】

★★★★

窪 美澄さんの7話収録の連作短編集

確かに「恋愛小説」ではあるのだけれど、終始暗く沈鬱な空気感で
恋愛小説に見られる浮き立つようなハッピーな感じとはかけ離れていました。

舞台は富士山の見える街の介護福祉施設
日奈、海斗、宮澤、畑中、4人の男女が物語の中心となって描かれています。
4人以外の登場人物達も皆、様々な問題を抱えていてその葛藤に苦しむ人ばかりです。

けれど、それぞれがどんな局面でも、感情を高ぶらせる事無く、淡々と冷静に自分の気持ちの赴くままに行動して行きます。
その決断は水の流れに身を任せている様で、そこには希望ではなく、ある種、絶望、諦めの感情が見え隠れしています。

窪 美澄さんの作品でいつも感じる「生」と「性」に今回は「死」も加わり、ただの恋愛小説ではなく人と人との結びつき、繋がり、情愛を感じる作品でした。
行間から人生を諦観している空気が溢れ出ていて、絶えずヒリヒリした気持ちになりますが、それこそがリアルを醸し出していました。

窪 美澄さんの独特な世界観が味わえる作品です。




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