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母ではなくて、親になる/山崎 ナオコーラ【レビュー】

タイトルから想像出来る様に出産と子育てに纏わるエッセイになっています。
1 人に会うとはどういうことか
から始まり
30 一歳の子どもまで
の30編のエッセイが収録されています。

私自身も著者と同じく前置胎盤での帝王切開だったので共感出来る部分があったり
又お産や子育て方法は100人いれば100通りある様に人それぞれ異なるので
新しい感覚を味わったり興味深かったです。

著者の旦那さんは町の書店員さんだそうで、文面から人の良さそうな素敵な人柄が伝わって来ました。

ただ夫の収入が低いと言うフレーズが幾度と出て来て、読んでいてなんとなく良い印象を持てませんでした。
「私が稼いでいる」「私が大黒柱だ」と自慢したいとありましたが
自慢されなくても雰囲気で十分伝わりましたし。

自身の事を「ブス」と自虐的に書いている事も気になりました。
今までに出された本の中でも何度も自分の事を「ぶす ぶす」と繰り返されているので、もう書かなくて良いんじゃないかなと。

将来、お子さんが思春期になりこの本を手にした時、お母さんがブスでお父さんが低収入と何度も書かれているのを見て傷つかないかな?とか、友達からその事で色々言われたりして友人関係が大丈夫かな?などと他人事とは言え心配しながら読んだのでとてもしんどい読書時間でした。
小説ならともかくエッセイなので尚の事、仕事とは割り切れない内容に不安になりました。

妻も夫も対等な立場で「親になる」と思う事で、「母親とはこうあるべき」的な呪縛から逃れ気持ち的に少し力を抜いて子育てが出来る様になるかも知れないなと思いながら読み進めて行きましたが収入の記述があるたびに違和感を感じました。

例えば受賞式に出席する際に旦那さんが自分自身の着て行く服を最初に心配した事に対して著者がまずは私では?と思った事など。

もちろん主役は著者なのでそう思えば良いのでしょうが、文章を読むと根底に自分の方が稼いでいると言った意識が読み取られなんだか複雑な気持ちになりました。
男女の枠にとらわれない多様性を受け入れたいとしながら
収入の格差で夫婦間に上下関係がある様に感じられ、著者が亭主関白な夫の様に見えてしまいました。
もちろん受け止め方、感じ方は人それぞれなのでそう感じない方もいらっしゃると思います。

2014年に出されたエッセイ「太陽がもったいない」は私は読んでいませんが、そちらにも旦那さんの年収や低収入の事が記載されている様で色々なサイトでそのレビューを拝読すると私と同じ様に収入云々の記述に不快感を感じられた方も大勢いらしたので今回はオブラートに包まれれば良かった様に思いました。

収入の多い・少ない、容姿、「らしさ」などに囚われず、それぞれが親として出来る事を夫婦で力を合わせて自然体でやって行けたら良いと私は思います。

余談ですが私は3回の流産、大学病院への通院、4回目の妊娠で前置胎盤での帝王切開経験者なので「母」になれた時はそれまでの人生の中で一番幸福な日となりました。
「母親らしい」かと問われればそれはそれで別問題ですが

これから出産・子育てに向かわれる方は、大変な事も多いけれど母になれた日の喜びを忘れないで、そして肩の力を抜いて夫婦で力を合わせて頑張っていって欲しいなと思います。




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