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賢者の愛/山田 詠美【レビュー】

★★★

全12章で構成された長編小説

谷崎潤一郎の名作「痴人の愛」とリンクしています。

「痴人の愛」はカフェで働く「奈緒美」ナオミを養女として育て上げ自分好みに調教して行くストーリーで主人公の河合譲治とナオミの8年間の愛の物語が描かれています。

そしてこの物語の主人公、真由子は独身の編集者。

真由子の父のみならず、真由子の初恋の人であり幼い頃から想いを寄せていた作家の諒一まで奪ったのは親友の百合。

諒一の子供を身ごもった百合、そしてその息子に真由子が「直巳」ナオミと名付けた日から百合への復讐が始まります。

22歳年下の直巳を手塩に掛けて調教して行く真由子

読み始めからラストに至るまで女の嫉妬、情念、恨みなどの心理描写が巧みに描かれており真由子にも、もちろん百合にも殆ど共感出来ないにも関わらず面白く読めました。

「ちょうだいオバケ」の百合の不気味さ、真由子の百合に対する憎しみから取った行動

本文中で諒一が発した言葉「…まったく…女の中には、いったい何人の女がいるんだ…」に集約されている気がしました。

「痴人」の河合譲治に対して真由子ははたして「賢者」と言えるのか。

疑問は残りますが読み応えのある作品です。




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