★★★★
「春、死なん」「ははばなれ」老人の性と母の性を描いた2篇収録。
雰囲気的には、女による女のためのR-18文学賞を思わせる様な作品。
著者は1993年生まれの若い作家さんだが、老人の性を扱った濃密なテーマを瑞々しいタッチで描いていて惹きつけられる。
表題作の主人公は、妻に先立たれ、息子夫婦と二世帯住宅で暮らしている70歳の富雄。
コンビニでDVD付きのアダルト雑誌を購入する富雄には、夫だとか父親だとか言う前に、一人の男としての存在感を感じる。
老いが纏わりつき、死へ近づいているからこそ性に執着する人間の本能を感じた。

幼少期から本が大好きなよつばと申します。私と同じく本が好きな方々の参考になれば幸いです。SNSもフォローしてくださると嬉しいです。