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シネマコンプレックス/畑野 智美【レビュー】

★★★★

最近注目している畑野智美さんの本作はシネコンを舞台にそこで働くスタッフ達の悲喜こもごもを描いた連作短編集です。

前作の「消えない月」も良かったけれど、こちらは今まで知らなかったシネコンの裏がかいま見れてとても興味深く読みました。

チケットのもぎりや館内の案内、清掃をする「フロア」
飲食売店の「コンセッション」
チケットを売る「ボックス」
グッズ販売の「ストア」
映写担当の「プロジェクション」
事務所で働く「オフィス」
これら6つのセクションで成り立っている事や名称、それぞれの仕事の内容などの情報もためになり今後シネコンへ行くたびにこの小説を思いだしそうです。

小説ではクリスマス・イブの1日の中で一生懸命働く普通の人々が描かれています。
大きな事件が起こるわけでもなく、濃いキャラの人物が登場するわけでもありませんが、とても惹きつけられるのは登場人物達が皆自分たちの身近に存在する様な「普通」の人達だからかも知れません。

ちょっと癖がある人、嫌な物言いをする人もいますが、どの人物もリアルです。
加藤くんの恋の話や主人公の島田さんと岡本くんの恋の行方には胸がキュンとときめいてしまい昔の自分を思い起こしてみたり幸せな気持ちになれました。

畑野さんの描く普通の人々、人間らしさに溢れていて読後感もほんわかでした。




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