わたしは栞を挟まない|sayuriの読書ブログ

熟柿/佐藤 正午【レビュー】

★★★★

「後悔、先に立たず」の言葉が身に染みる一冊だった。

激しい雨が降る夜、車を運転していた身重のかおりは携帯電話に気を取られ轢き逃げ事故を起こしてしまう。

確かに罪は罪だ。

だが、その一瞬の過ちで、刑務所内で出産した息子と引き離され、坂道を転げ落ちていく主人公の姿に同情の念を抱いた。

千葉から山梨県笛吹市の石和温泉、岐阜のパン工場、大阪のパチンコ屋、福岡のホテルと行く先々で苦い思いを味わいながら必死に生きる彼女に息子と逢える日が来る事を祈った。

最終章はもどかしさと、やるせなさと愛おしさで胸が詰まる。

まさに『熟柿』だ。




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