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明日の食卓/椰月 美智子【レビュー】

★★★★★

椰月 美智子さんの長編小説

プロローグから惹き込まれ、先が気になり一気読みでした。
「イシバシユウ」と言う名の8歳の男児を持つ3組の家庭の様子が順番に繰り返し描かれて行きます。

静岡在住・専業主婦の石橋あすみ36歳、夫・太一は東京に勤務するサラリーマン
息子・優8歳。

神奈川在住・フリーライターの石橋留美子43歳、夫・豊はフリーカメラマン、
息子・悠宇8歳。

大阪在住・シングルマザーの石橋加奈30歳、離婚してアルバイトを掛け持ちする毎日
息子・勇8歳。

それぞれ住む地域、家族構成や家庭環境は違えども「ユウ」と言う
同じ読みをする名前の男の子を育てると言う1点が共通しています。

3人の母親は皆、子供を愛していますが、日常のほんの些細な事がきっかけでどんどん歯車が狂い、生活にさざ波が立ち始めます。

どんなに可愛い我が子であっても、それが母と息子と言う間柄であっても苛立ちや怒りを感じる瞬間は訪れます。

夫、友人、学校関係者、義母、児童相談所職員など登場人物の描写が丁寧で特に子供に対してイライラする夫の様子はリアリティーがありました。

幼児虐待がテーマですが、この本を読んでリアリティーがないと思える方はきっと幸せだと思いますし現在子育て中のお母さんには教訓にもなります。
我が家の息子はもう成人していますが、自身の子育て中の事を思いだしながら3人の母親達に感情移入し、共感したりエールを送っていました。

エピローグに向かっては推理的な要素もあり、途中で本を閉じる事が出来なくなりました。
誰にでも起こりうる「魔の一瞬」後悔してもしきれない、その時がどうか来ません様にと祈る様に読んだ1冊。
今まで読んだ椰月 美智子さんの作品の中で一番心に響きました。




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