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全作品読んでいる小池真理子さんの長編小説です。
還暦近くで夫を亡くし、心のバランスを崩しかけた鏡子が主人公
軽井沢にある原島富士雄記念館で働いています。
そんな時、精神科医である5歳年下の高橋と知り合い二人は惹かれあうようになります。
前半はいつもの小池さん独特の物憂げで不穏で倦怠感のある空気感の中でゆっくりと物語が進行します。
高橋が突然姿を消した時点からミステリー要素も加わり中盤以降ぐっと引き寄せられて行きました。
登場人物が少なく人物描写が見事でそれぞれの人物、特に鏡子の姿は絶えず脳内映像で動いていました。
皆、病んでいるけれど、1人1人に共感出来る部分もあり中盤からは一気読みでした。
最後の高橋からの手紙で全ての謎が溶け、光が見えるエピローグは読後感も良かったです。
いつもながら丁寧に繊細に描かれた一分の隙もない作品で読み応えがありました。

幼少期から本が大好きなよつばと申します。私と同じく本が好きな方々の参考になれば幸いです。SNSもフォローしてくださると嬉しいです。