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波濤の城/五十嵐 貴久【レビュー】

★★★★

欠かさず読んでいる五十嵐貴久さん

本作は豪華客船レインボー号に起こった大事故と、その中で繰り広げられる人間模様が迫力ある描写と丁寧な心理描写で描かれています。

以前テレビで豪華な船旅の様子を観て、一度は経験したいと思っておりました。

が、いつも真っ先に目を通す「後書き」で自分が想像していたより遥かに船の事故が多い事を知り、そして読書中もそのド迫力な描写で恐怖を感じドキドキしながら読み進める事になりました。

登場人物が多いですが、キャラクター設定が明確で解りやすい事もあり、感情移入しやすかったです。

自己中で己の損得勘定で行動する船長の山野辺(やまのべ)に対し、銀座第一消防署の消防士・神谷夏美と柳雅代のプライドを持った行動が対照的に描かれている事でストーリー的にものめり込んで読めました。

大型客船の中での乗客達の様子、船員たち、事故後、逃げ惑う人々等、絶えず脳内映像で動いていてスピーディーな展開に目が離せません。

パニックになった時、他人を蹴落しても自分だけ生き残ろうとする人
他人の為に自分を犠牲にして死を選択する人
色々な人物が登場し、人間のエゴイズムな面も見えてしまいますが
「命より大事なものがある」「不可能と思い込むのは自分の心の弱さ」
など心に響く言葉も随所にあり、辛い大事故ではあったけれどエピローグでは静かな感動も味わえ読後感も心地良い余韻が残りました。




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