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欠かさず読んでいる唯川 恵さん
唯川さんと言えば恋愛小説のイメージが強いですが、本作は登山家の田部井淳子さんをモデルにした限りなくノンフィクションに近い作品となっています。
ページ数にして435ページ
フォントサイズも小さ目で、聞きなれない地名や登山用語などがあり、読むのにかなり時間を要しましたが、綿密な取材をされた様子が丁寧な文章から伝わって来て、とても良い作品でした。
2016年朝刊の記事で田部井淳子さんがお亡くなりになられた事を知りましたが、田部井さんの事を全くと言っていい程、存じ上げておらず、今回この本を手に取って初めてこの方の功績や人としての素晴らしさを知る事が出来、それだけでも読んだ甲斐がありました。
40年前のエベレスト登頂、その裏にあった女性登山家チームならではの苦悩、葛藤、女性同士内の軋轢、家族の問題、海外遠征に掛かる莫大な費用と人手、希望者が全員登れる物ではないと言う事も初めて知りました。
山の頂上に立つまでの雪崩の恐怖、高山病、酸欠、友人の死、読みながら私自身も呼吸を止めて酸欠状態になる程の臨場感溢れる描写で、終始脳内映像で物語が展開して行きました。
ほんの少しの気のゆるみが死へ繋がる事もある大変な登山を、何故そこまでして挑戦するのか、自分にはとうてい真似の出来ない事だけに田部井淳子さんの強さ、柔軟さ、優しさなど、彼女の持つ心の奥深さを感じ、感動しました。
唯川さんの圧巻の筆力にも感激し、読後感、晴れやかな気持ちになれる作品でした。
とても良かったです。

幼少期から本が大好きなよつばと申します。私と同じく本が好きな方々の参考になれば幸いです。SNSもフォローしてくださると嬉しいです。