わたしは栞を挟まない|よつばの読書ブログ

ミシンと金魚/永井 みみ【レビュー】

★★★★

何度も涙が込み上げた。
ラスト数頁では涙がとめどなく溢れた。

物語は認知症を患う老女・安田カケイの一人語りで進んでいく。

日々薄れゆく記憶の中で、朧げながらも覚えている過去のエピソードの数々に、カケイさんの人生の苦楽を想い胸が熱くなる。
現代とは比べ物にならない暴力や死がごく身近にあった時代を生き抜いて来たカケイさんの今に、哀しみと共に人間の尊厳と美しさを感じる。

誰もが生まれて老いてやがて死ぬ。

「子ども叱るないつか来た道、年寄り笑うないつか行く道」
凄絶な彼女の人生を想いながら幾度もこの言葉が脳裏を過ぎる。

沁みた。




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