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千日のマリア/小池 真理子【レビュー】

★★★★

欠かさず読んでいる小池真理子さんの短編集です。

「過ぎし者の標」「つづれ織り」「落花生を食べる女」

「修羅のあとさき」「常夜」「テンと月」「千日のマリア」「凪の光」

の8編が収録されています。

本の帯に「9年越しの最新作品集」と記載されている様に1話目の「過ぎし者の標」は2006年5月に発表された作品です。

そして2015年1月に発表された「凪の光」まで9年越しに生と死、愛と性、男と女を描いた作品集になっています。

小池作品は全作品読破し本棚に宝物の様に保存しています。

初期の頃のホラーやサスペンス、それに続く恋愛、怪談と様々なジャンルがありどれも充実した内容ですが最近描かれる生と死がテーマの作品もしみじみとした味わいがあって心を打たれます。

今回の8つの短編ではまっとうではない歪んだ男女関係も登場しますが小池さんの美しい文章と淡々と静謐に流れる独特な空気感の中ではそれすらも自然に思えて来ます。

表題作の「千日のマリア」では妻とその母との関係を持つ男、秀平が描かれていますが歪んだ関係の中にも人間の脆弱さや哀しみを感じ、切ない気持ちになりました。

どの短編も決して派手ではないけれど趣があり会話1つ1つを取っても登場人物の表情が浮かび上がる様でした。
装丁の美しさもいつも楽しみの一つとなっています。
次作も待ち遠しいです。




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