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羊は安らかに草を食み/宇佐美 まこと【レビュー】

★★★★★

苦しかった。

読後様々な想いが溢れる。

認知症を患い日毎記憶が失われてゆく86歳の益恵。
アイ、富士子と共に三人の老女は益恵の86年の人生を遡る最後の旅へ出る。

それと並行して描かれるのは終戦後の満州。

僅か10歳で家族を失くした益恵は偶然出会った同い年の佳代と日本を目指す。

満州の描写は壮絶極まりない。
戦争によって理性が失われ人が人でなくなる。
死と隣り合わせの日々が10歳の子らにどれ程の恐怖だったか想像に難くない。

引揚げ後に益恵を襲う悲惨な出来事も哀しみに拍車を掛ける。

壮大にして壮絶な人間ドラマに心が震えた。

傑作。




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