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今まで命の誕生は奇跡であり、喜ばしい事だと信じきっていた。
AID(精子提供)によって生まれ、自分のルーツが解らない人達の苦しみなど知るよしもなかった。
543ページの長編だが、文中からは著者のメッセージが感じとられ、一字一句、嚙みしめながらの読書となった。
精子提供を望み、妊娠・出産を目指す夏子と、AIDで暴力的に誕生させられたと話す善百合子を対比する事で『生まれること』の意味や意義を考えさせられる。
そこには自分の想像を遥かに超える苦悩が存在していた。
それでも生まれて良かったと思える時が来る事を心から願う。
傑作。

幼少期から本が大好きなよつばと申します。私と同じく本が好きな方々の参考になれば幸いです。SNSもフォローしてくださると嬉しいです。