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しずかなパレード/井上 荒野【レビュー】

★★★

私の中で「不穏」という言葉で真っ先に思い浮かぶのは井上荒野さん。
本作も終始不穏さに満ちていた。

佐世保市にある和菓子店の若女将が突然姿を消した。
夫と幼い娘を捨てて。

不倫相手の元へ向かったはずだったが、消息不明のまま、12年の月日が流れる。

夫の怒り、不倫相手の困惑、娘の空虚感、それぞれの思いが淡々とした筆致で綴られていく。

派手な展開はない。
登場人物全員が諦観の色に染められているようだ。

絶対悪は存在しないけれど、誰もが普段は心の奥底に隠している負の感情が炙り出され、心がザラついた。

皆がしずかなパレードの演者だ。




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