★★★
私の中で「不穏」という言葉で真っ先に思い浮かぶのは井上荒野さん。
本作も終始不穏さに満ちていた。
佐世保市にある和菓子店の若女将が突然姿を消した。
夫と幼い娘を捨てて。
不倫相手の元へ向かったはずだったが、消息不明のまま、12年の月日が流れる。
夫の怒り、不倫相手の困惑、娘の空虚感、それぞれの思いが淡々とした筆致で綴られていく。
派手な展開はない。
登場人物全員が諦観の色に染められているようだ。
絶対悪は存在しないけれど、誰もが普段は心の奥底に隠している負の感情が炙り出され、心がザラついた。
皆がしずかなパレードの演者だ。

はじめまして。
255文字で本の感想を書いています。
選書の参考になれば嬉しいです。
☆受賞歴☆
読書メーター×ダ・ヴィンチ 第5回 ベストレビュアー賞受賞 「僕が僕をやめる日」
応募数92件 HN・よつば
松村 涼哉『僕が僕をやめる日』 第5回 レビュアー大賞 2020年 課題図書 – 読書メーター (bookmeter.com)
読書メーター×ダ・ヴィンチ 第6回 優秀レビュアー賞受賞 「かがみの孤城」
応募数599件 HN・よつば
辻村 深月『かがみの孤城』 第6回レビュアー大賞 2021年 課題図書 – 読書メーター (bookmeter.com)
読書メーター×ダ・ヴィンチ 第7回 ベストレビュアー賞受賞 「逆ソクラテス」
応募数748件 HN・よつば
伊坂 幸太郎『逆ソクラテス』 第7回レビュアー大賞 2023年 課題図書 – 読書メーター (bookmeter.com)
ブクログ BEST USER AWARD 2023 Silver賞 HN・よつば