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不在/彩瀬 まる【レビュー】

★★★★

彩瀬 まるさんの長編小説

主人公は斑木(まだらぎ)アスカのペンネームを持つ漫画家
本当の名は錦野明日香、31歳

仕事も成功し、5歳年下の俳優、冬馬と同棲し、一見なんの不自由もない生活を送っている様に見える。

だが長らく疎遠だった父が亡くなり、遺産として大きな洋館が残され、その屋敷の整理をして行くうちに過去から現在までの様々な出来事に想いが巡り、今の生活が少しづつ崩れて行く様が不穏な空気感の中で描かれている。

父親に対して燻っていた感情が、屋敷の整理と言う行動を通して表面化した時、明日香の内に秘めていた思いが冬馬に対して爆発してしまう。
明日香の言う「愛」とは冬馬にとってはただの執着で忠誠でしかない。
明日香の発する言動からいかに愛情に餓えていたかが感じられヒリヒリする。

淡々と静謐な雰囲気で描かれているが、人と人の関わり方、人間のエゴイズムなどが表現されていて深みがあった。
ざらざらとしているけれど、ラストには気づきもあり読後感は良かった。




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