わたしは栞を挟まない|よつばの読書ブログ

人でなしの櫻/遠田 潤子【レビュー】

★★★★

遠田劇場、狂い咲き。

父親と絶縁状態だった日本画家の竹井清秀に掛かって来た一本の電話。
駆け付けた先で目にしたのは父親の遺体と八歳で誘拐され十一年間監禁されていた全裸で震える少女。

読者の不快感など想定内だと言わんばかりに物語の衝撃度は更に加速する。

忌み嫌いながらも己の空洞を埋めるかの如く父の生き様をなぞる清秀。
芸術へ向かう迸る熱量と承認欲求、生への執着、あらゆる感情の渦が混然一体となって迫り来る。

淫靡で禍々しい描写に息苦しさを伴う一方で清秀の哀しみが伝染し胸が詰まる。

凄まじいまでの人間の業の深さに圧倒された。




  • 人気のレビュー
  • 関連するレビュー

気軽にコメントどうぞ

*
*
* (公開されません)