わたしは栞を挟まない|よつばの読書ブログ

朔が満ちる/窪 美澄【レビュー】

★★★★

深紅の背景、血痕が染みついた斧。
装丁を目にした瞬間から不吉な予感が脳裏を過り怯んでしまう。

父親の暴力に苦しむ家族がいる。
そして少年は自分の中に黒い炎を噴き出す龍を飼い慣らす。

実父を憎悪し殺意をも抱かざるを得ない僅か13歳の少年の境遇があまりにも不憫だ。
行動を起こさない母に対しても怒りが募る。

暴力は身体と同時に心も破壊し、どれ程の年月を重ねても受けた傷は永遠に残る。

親だから絶対ではない。
親を憎む事に罪悪感を感じる必要もない。

ラスト五行の美しい筆致は圧巻。
人の痛みを知る彼らなら未来を恐れず生きていけるはずだ。




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