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感傷的な午後の珈琲/小池 真理子【レビュー】

★★★★★

普段、図書館で本を借りることがほとんどですが
私の自宅本棚には小池真理子さんの著書に限り全作品が並んでいます。

1992年頃、初めて小池さんの作品を手に取り、すぐに虜となって、1993年息子を妊娠中、私が住む地元では大きな書店がない事もあり、安定期を待ってメモを片手に名古屋市内の書店を次々に廻り、それまでに出版された作品を探し廻り購入した事が懐かしい思い出です。

今ではネット購入も当たりまえですが当時は書店で探し見つけた時の喜びもひとしおでした。

さて本作には46篇のエッセイが収録されており
ここ数年の小説にも見られる生、死、性が美しく丁寧な文章で綴られています。

特に印象に残ったのは著者と百年前のエラールと言う名のピアノとの出会い。
様々な偶然の成せる技なのか、はたまた必然だったのか、読んでいて私にはそれが「縁」の様に思えました。
今から20年以上前、小池さんの本を手に取っていなければ、今こうしてこの本に出会う事もなかったかも知れず自分自身の出来事と照らし合わせながら読ませて頂きました。

愛猫、両親、作家仲間との別れなど、淡々とそして静かな言葉の中に深い哀しみと愛情が込められていて時に切なく感慨深く読みました。

長きに渡り、小池真理子さんの作品を読み続けていますが、一字一句、細部に至るまで手抜きを感じた事がなく、行間にまで心を掛けたであろう事がいつも伝って来ます。

私の中の小池さんのイメージは感受性豊かで繊細、傷つきやすさと激しさもありながらそれらを深い場所に押しやり浄化する湖の様な方と言う印象を持っていましたが本著の「水に身を委ねる」で勝手ながら自分なりに納得した次第です。

それにしても小池さんの作られるブランチ、脳内映像で描いただけでも本当に美味しそうでした。




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