★★★
欠かさず読んでいる明野照葉さんの長編小説です。
前作「愛しい人」から作風に変化を感じましたが、この作品では更に変化を感じました。
明野照葉さんと言えば、怖いお話。
女性心理の奥深くを恐ろしい程容赦なく描き、ゾクゾクする様な本を書かれるイメージだったのですが、この著書に至っては、(え?これが明野さん?)と思える様な作品に仕上がっています。
風見窓子。33歳。
一般職の正社員として勤務する会社に不満はないし、寿退社する後輩女性を妬んでもいない。
友人以上恋人未満の交際相手はいるけれど、べつに結婚したいと思っていない。
しかし同居する両親からは「干支三回りが限度」と宣告されてしまう。
そんな彼女に「しないの、結婚?」と声をかけて来たやり手の女性上司、47歳で独身の有磯潮美。
東京下町・三ノ輪にある潮美の実家に通い出したのをきっかけに、窓子の日常は突如として変容し、家族作りのカードのシャッフルがはじまった!
社会からも東京からも家族からも危うくはぐれそうになっている三十代未婚女性の居場所探しの物語。
こんな内容で、言えばどこにでも転がっていそうな一見平凡なお話です。
が、そこは明野さん。
登場人物の巧みな描写、感情表現の細やかさ、それぞれのキャラクター設定がしっかりしていて平凡な話が、自分のすぐ身近で行われている様な錯覚に陥ります。
以前の怖い作品も好きですが、こんな家族や日々の暮らしを描いた様な作品も又一味違って面白かったです。

幼少期から本が大好きなよつばと申します。私と同じく本が好きな方々の参考になれば幸いです。SNSもフォローしてくださると嬉しいです。