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ユートピア/湊 かなえ【レビュー】

★★★

湊 かなえさんの長編小説です。

舞台となるのは太平洋を望む人口約七千人の港町、鼻崎町(はなさきちょう)

仏具店の嫁として店を切り盛りする、堂場菜々子(どうば ななこ)
その娘で交通事故により車いすで生活を送る、久美香(くみか)小学1年生
恋人の宮原健吾に誘われて移住して来た星川すみれ
夫の転勤で五年前から鼻崎町に住んでいる相場光稀(あいば みつき)
その娘の彩也子(さやこ)小学3年生
この5人が軸となりストーリーが展開して行きます。

表紙のタイトル、亀裂が入った「ユートピア」を象徴するかの様に、理想郷とは程遠いブラックな流れが続きます。

足の不自由な、久美香と親友の彩也子の友情がきっかけとなり、三人の女性達によって車椅子の基金「クララの翼」が設立されますが、そこには純粋な善意とはかけ離れた人間の嫌な部分がこれでもかと露出されて行きます。

「クララの翼」「火事」「5年前の殺人事件」「誘拐事件」と少しテンコ盛りな感がする内容の中に、嫉妬心、欺瞞、自惚れ、嘘、と人のドロドロとし た感情表現が延々と続き、まともな登場人物は誰1人としていないのかと思いながら読み進めたら<はなカフェ>で働く、菊乃(きくの)さんの言葉でやっと ホッとさせられました。

しかしそれもつかの間、最後のエンディングで一気にどんよりとした気分にさせられました。
久々の湊さんのイヤミス全開の作品です。




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