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悪母/春口 裕子【レビュー】

★★★★★

欠かさず読んでいる春口 裕子さんの作品
今回はママ友がテーマの連作短編集です。

「第一話 招かれざる客」 「第二話 毒の葉」 「第三話 一緒がいい」
「第四話 難転」 「第五話 ウチの子が主役(センター)」 「第六話 トモダチ契約」
の6編が収録されています。
連作集ですが短編としても楽しめます。

過去に読んだ春口さんの著書の中で一番恐ろしかったです。
読んでいる間も胸がギュっと締め付けられる様な感覚になり読後感も非常に悪く、けれど目を背ける事が出来ない、そんな作品でした。

主人公、岸谷奈江(きしたに なえ)が軸となりストーリーが進行して行きます。
そしてLINEグループの長谷川佐和子(はせがわ さわこ) 山中みゆき 石井京香(いしい きょうか) 
LINEグループには入っていないけれどこの物語の鍵を握る宏美

自分自身、子育て中に経験して来た事があったり、LINE、ツイッター、facebook等のSNSで耳にするイジメや派閥などママ友の世界がリアルに描かれています。

相手の都合などおかまいなしに突然家を訪れて長居をするママ友
小学校受験での足の引っ張り合い、家の前の道路を「広場」にして子供たちを遊ばせ道路のみならず敷地内への侵入まで容認するママ達、我が子がいつもセンターとなる様に学校へ乗り込む母、自分勝手で自己中な人物がたくさん登場します。

全く同じではない物の似たような行動をするママ達をたくさん見て来ました。

登場人物それぞれに自分を照らし合わせてみて自分を顧みたり、SNSの使い方を今一度考えさせられたり、読みながら色々な思いが頭を駆け巡りました。

自分を持たない主人公の奈江にはイライラしながらも自分も同じように考えたり揺れたりした経験から共感する部分もありました。

子供が出来た時点でママとなり、○○ちゃんママと呼ばれママ友の付き合いが始まります。
みんな我が子が大切で必死に子育てをしているけれど、その一生懸命さが時にずれていたり必死過ぎて冷静になれず間違った言動をしてしまったりと言う経験は誰しもあると思います。

人間関係は難しい、特にママ友の世界は根底に深い愛情があるからこそ、余計に難しい、そんな印象を受けました。
サスペンス、ホラー的要素もあり、四話の「難転」と「第六話 トモダチ契約」は特にゾッとしました。

ウンザリするけれど読み応えのある、そんな作品です。




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